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雨宿り

・牛若神帝、一本釣神帝







「ひと雨くるな」

呟く一本釣神帝に、隣を歩いていた牛若神帝はまさかと思って空を見上げた。
先ほどまで快晴だった空は、不穏な雲に覆われ始めている。

「よく分かりますね」
「匂いがするんだよ」
「雨の匂いですか」

牛若は目を瞑って一本釣の言う匂いを感じようとしてみる。

「濡れた土のような匂いがします」
「海が近いとそれに潮の香りも混ざるんだ。普段は分からないのに、雨の降る前だけ感じるんだぜ」

一本釣も目を瞑ってくんくんと嗅ぐ。

「ここは全然海に近くないな。森の匂いしかしないや」
「そんなに嗅ぎ分けられるなんて…」

まるで犬みたいだ、と思って牛若は一人笑った。

「あ、今ちょっと馬鹿にしただろ」
「いえ、とんでもない。他にはどんな匂いがあるんですか?」
「そうだなぁ」

思案していると顔に雨粒が当たる。
ポツポツと、すぐにザァッと音を立てて降り始める雨に、一本釣は盾を傘代わりにして牛若に入るよう促した。

「本格的だなぁ」
「これは雨宿りした方がいいかもしれませんね」

二人は雨の当たらぬ場所を探す為に歩き出す。

「さっきの話だけど、雪の匂いってのもあるな」
「どんな匂いなんです?」
「どんなって言われてもなぁ…あ、あと春の匂いとか秋の匂いもあるぜ」
「へぇ、そんなに」

面白そうに笑う牛若に、一本釣は頷いた。

「あそこで雨宿りしよう」

青々と生い茂った大木の下に入ると、二人は盾では防ぎ切れなかった水滴を払って腰を下ろす。

「貴方は皆が気付かない所で、季節を感じているんですね」
「なんとなくだけどな」
「何だか素敵ですね。情緒的だ」
「そうかなぁ」

木に寄り掛かって笑っていた一本釣だったが、再び目を瞑って何かを嗅ぎ分ける。

「今度はどんな香りがするんですか」

牛若に問われ、一本釣は振り向くとハハハと笑った。

「お前は何だか甘い匂いがするなぁ」
「私ですか?」
「上品だけど…なんだかお菓子みたいだな」

言われて牛若は自分の身体を確かめる。

「そうですか…私には分かりませんが…」
「いい匂いって事だよ」

笑いながら頭の後ろで腕を組んでくつろぐ一本釣の言葉に、牛若は顔を綻ばせた。

「貴方は海の香りがする…気がします」
「そう?」
「いい香りですね」

にっこり笑う牛若に満足そうな顔を見せると、二人は木陰から空を見上げた。
雨はまだ止まないが、雲間から日の光が差し始めている。
どうやら通り雨だったようだ。

「狐の嫁入りか。こりゃ虹が見れるかもしれないな」

意外と感性豊かな一本釣の言葉に、牛若は一人笑った。

「貴方との雨宿りも、悪くはないですね」
「退屈しないなら、良かったよ」

青空が広がるのを見上げながら、二人はその場でしばしの休憩を楽しんだ。
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