BANBAN★BINO

©2003 BANBAN★BINO
TOPBMSS(旧~新) ≫ ホントの事

ホントの事

・聖遊男ジャック、聖幻ピーター







聖遊男ジャックと聖幻ピーターの二人は午後の巡回に出ていた。
天気は快晴で暖かく、適度にそよ風が流れ昼寝にはもってこいの陽気だ。
小さな小川を見つけると、二人は少し休憩を取る為に降り立った。

「見回りって言っても、こうも何事もないと暇だな」
「何もないなんて、いい事じゃないか」

無造作に小川で顔を洗って寝転がる男ジャックに、ピーターは苦笑する。

「まあ、そうなんだけどさ。刺激が足りないっていうか…おっ!」

男ジャックは何かを見つけると、勢いよく起きあがって小川の向こう側へと飛んでいく。
やれやれと座り込んで、髪を撫でる風を心地良く受けていたピーターだったが、戻ってきた男ジャックが腕いっぱいに果実を持ってきたのを見て目を丸くした。

「へへ、美味そうだろ」
「そんなにいっぱい、どうするんだよ」
「余ったら持って帰ればいいだろ?どれどれ」

一口食べて、男ジャックは笑顔を見せる。

「美味いぜ!お前も食えよ」

投げ渡された林檎のような果実を、ピーターはしげしげと眺めた。

「勝手に取っていいのかなぁ」
「平気平気。どうせそのままにしてたら腐って落ちちゃうんだから」

それもそうかと口にしてみれば、ほのかな甘酸っぱさが口に広がった。

「本当だ。美味しい」

顔を綻ばせるピーターを見て、満足そうに男ジャックは隣に座る。

「しかしよく見つけたなぁ。食い意地張ってるんだから」
「なんだって?」

ピーターの言葉に、男ジャックはムッとして振り向いた。

「僕、何か言った?」
「言っただろ今、食い意地が張ってるって」

首を傾げるピーターに、男ジャックは釈然としない様子で睨んでいたが、鼻息を鳴らすと再び果実を食べ始めた。

「しかし美味いなぁこれ。ヤマトにも食べさせてあげたいもんだぜ」
「キミってば、本当にヤマト爆神の事ばかり考えてるんだなぁ」

笑顔を見せるピーターに、今度は男ジャックが眉をしかめた。

「…何でオイラの考えてる事が分かるんだよ」
「だって、今言ったじゃないか。ヤマトヤマトって、本当にヤマトが好きなんだか…」

そこまで言って、ピーターは驚いたように自分の口を手で塞いだ。

「おい、もしかして…」

男ジャックは食べていた果実を一瞥して放り投げた。

「まさか思った事が全部口に出てるって事なのか!?」

驚く声を上げた自分に驚いて、男ジャックも口を塞いだ。

「キミが変なモノ取ってくるから!」
「なんだよ!お前だって美味いって食ってただろ!」

睨み合うが、言い合っていても仕方がない。

「とにかく喋らなければ問題は…全く面倒事持ってきてさ!軽率なんだよな!」

口を塞ぐ間もなく言葉が滑り出て、ピーターはばつが悪そうに男ジャックを見た。

「…お前、普段オイラの事そういう風に思ってる訳ね」
「いや、そうじゃ…その通りだよ。少しは反省して貰いたいものだな」
「な、なんだと!?キザったらしくて苦手だと思ってたけど、やっぱりだぜ!優等生ぶるのもいい加減にしろってんだよ」
「なんだって!?」
「いや、今のは…」

口を開けば心に思っている事が表に出てしまい、会話にならずに二人は頭を抱えた。

「仕方ないにせよ、キミがそんな風に僕の事を思ってたなんて、心外だな。酷いじゃないか」
「オイラだって同じだよ!何だよ少し可愛いからって調子に乗るなよな」

そこまで言って慌てて口を塞ごうとしたが、最早無意味と悟って男ジャックは口を尖らせて横を向いた。

「可愛い?ハハッ…男ジャック、僕の事可愛いって思ってるの?」
「うるせー!見た目だけだよ!女みたいな顔してさ!」
「女みたいは余計だけど、悪い気はしないかな。キミもその姿になってからは可愛くなったとは思うけど、何しろ性格がなぁ」
「嬉しくない!」

ピーターは面白そうにニヤニヤ笑いながら、男ジャックをじっと見た。

「ヤマト爆神が見たら驚くだろうな」
「アイツはそんなの気にしないだろ」
「いやあ、分からないぜ?男ジャック、綺麗になったねって」
「き、気持ち悪ぃ…」

青冷める男ジャックに、ピーターはゲラゲラと笑い転げる。

「お前、性格悪いぞ!」
「だって、全部口に出ちゃうんだもん。仕方ないだろ?」

起きあがると開き直ってしれっと肩をすくめるピーターを、男ジャックは呆れたように見た。

「で、ずっと気になってるんだけど、キミはヤマトの事が好きなんだろ?」
「す、好きな訳…好きだよ!」

思いっ切り肯定してしまい、男ジャックの顔がみるみる赤くなる。

「違う!放っとけないだけだ!だってアイツは一番の親友なんだからっ…」
「アハハッ!素直な男ジャックって、おかしいなぁ!」

まるで悪戯を楽しむ子供のように笑うピーターに、男ジャックは殴りたくなる拳を震わせた。

「こ、この野郎…」
「でも、そうやって素直な方がいいな。だってヤマトが悪魔に捕まった時に、キミが誰よりも彼を心配してるのは分かりきってる事なんだしさ。何で意地張ってるのか分からないや」
「…バカ野郎。そんなの恥ずかしいからに決まってんだろ」

そっぽを向く男ジャックに、ピーターはふふっと微笑んだ。

「本当は一緒にいたいんだろ?」
「…いたいよ。ずっと一緒にいて一緒に旅をして戦いたいさ」
「ふうん。キミってさ、気持ちの良いヤツだね」
「よせよ。照れるだろ」
「男ジャック可愛い」

笑うピーターを、男ジャックは気色の悪いものでも見るような目で見た。

「いいなぁ。僕もアリババと一緒に戦いたかったな」
「お前、アリババが好きなのか?」
「好き…っていうのかなぁ。でもずっと傍にいたいとは思うかな」
「お前も、オイラと同じなんだな」

少し寂しそうに遠くを見つめるピーターに、男ジャックは自分と同じような思いを抱いているのかと少し親近感が沸いた。

「でも、全然分からなかったなぁ」
「そりゃあ、僕はキミと違うからね」
「どういう意味だよ」
「キミ、単純だから」

いつも周りに合わせて言葉を選んでいるピーターにズバズバと物を言われ、調子が狂うと思いつつも普段よりも心地良いなと男ジャックは笑った。

「しかしどうしよう。こんなに思った事ばっか口に出てたら皆に会い辛いなぁ」
「お前、普段どういう風に皆の事思ってるんだよ」
「そんな変な事は考えてないとは思うけど、気分悪くさせる事言っちゃうかもしれないだろ?キミに言ったみたいにさ」
「お前は真面目だな」

一応自分を気遣う言葉が含まれているのに、男ジャックは苦笑した。

「でもちょっと面白いな。こっそり皆に食べさせてみたいや」
「お前、恐ろしい事平気で考えるのな…」

少し見直したと思った男ジャックだったが、悪戯っぽく言うピーターの言葉に前言撤回した。

「でもさ、気にならない?例えばヤマトとかに食べさせてみたらとか…」
「そういうのは知りたくないや。アイツがオイラの事どう思ってるかなんて、オイラにはどうでもいい事だからさ」

取り繕わずに言うという事は、本当に心からそう思っているのだろう。
ピーターは男ジャックの清々しい横顔を、感心したように見つめた。

「キミって、やっぱ気持ちの良いヤツだな」
「オイラはお前が怖くなったよ」
「僕は前よりキミが好きになったかな」
「やめろよ気持ち悪い…悪い気はしないけどさ」
「勘違いするなよ。本当にちょっとだけさ」
「ああ、そうですか」

疲れたように溜息を吐くと、男ジャックは残りの果実を持って立ち上がる。

「どうするんだ?」
「こんな恐ろしい物、持って帰れないだろ。埋めてくる」
「そうかなぁ。本音を話すのって、結構気持ち良いもんだなって思ったけど」
「お前は気楽だね」

男ジャックは再び小川を飛び越え、実がなっていた木の根元に果実を埋めた。

「さて、これでいいとして、オイラ達はどうしよう」

戻ってくると腕を組んで男ジャックはピーターを見る。

「その内戻るんじゃない?そんなに食べてないし」
「本当に、お前案外楽天的だよなぁ…見方変わったよ」
「褒め言葉として受け取っておくよ」

男ジャックの言葉にピーターは笑顔を見せると、立ち上がった。

「男ジャック、僕の事好き?」
「はぁっ!?」

唐突に訊かれて男ジャックは素っ頓狂な声を上げる。

「何言ってんだよお前、嫌いじゃないよ面白いヤツだって分かったし」
「なるほど。否定しないって事はまだ効果が続いてるって事だな」
「はあ?」

首を傾げる男ジャックに、ピーターはニヤリと笑った。

「こうやって普段なら絶対に答えない事を聞いていけば、効果が続いてるか分かるだろ?」
「…お前、本当に可愛い顔しておっかないヤツだな…」
「ありがとう。僕、男ジャックの事好きだよ」
「だからそういうのは…嬉しいけどっ…!」

慌てて口を噤む男ジャックに声を立てて笑うと、ピーターは飛び立った。

「よし!じゃあ、お互い質問し合いながら見回り再開しようぜ!いつまでも休んでる訳にもいかないだろ?それに、お互い理解し合えて丁度いいや」
「…マジかよ」

ピーターの提案に頭を抱えながら、男ジャックも飛び立つ。
二人の質問合戦は果実の効果が切れる夕方まで続いたのであった。

スポンサーサイト
BMSS BMSS(旧~新) | Comments (0) | Trackbacks (-)

Comment













非公開コメントにする