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千石さんと神尾くんのお話

・千神
・腐向け





―好きだよ神尾くん

そんな事を言われても俺は男だし相手も男で…
混乱して曖昧な返事をした。
それでも相手は惜しみなく会いに来てくれて、最初はちょっと鬱陶しいなって思ってた。
でも…

「最近さーストテニにカッコいい人来てるの!」
「マジで!見に行っちゃおうかなー!」

自転車で追い越した同じ年ぐらいの女子の言葉が耳に入り、俺は小さく舌打ちをする。
ストテニはテニスをする場所だぞ?そんなミーハーなギャラリーが増えても迷惑だって。

辿り着いたいつものコートにはいつもと似つかぬ黄色い声。
軽く人だかりになってるその先にはその張本人がヘラヘラしながら手を振っている。
その人は俺を見つけると試合もそっちのけで駆け寄ってきた。

「いやぁ、キミや杏ちゃんの話だと、ここはむさ苦しい場所って聞いてたのにカワイイこいっぱいで嬉しいなぁ~」
「アンタが目立つからでしょ。それより試合の途中じゃないんですか、千石さん」

荷物を置きながら一瞥すると、千石さんは頭を掻きながらコートに戻っていった。
ったく…自覚あんのかあの人。

ラケットを取り出しガットの確認をしながら試合を眺める。
正直ここは千石さんには物足りない相手ばかりだろうに、懲りずに来て一体どういうつもりなんだ?

千石さんが決める度に、悲鳴があがるギャラリー。
くそっ…イライラするな。

案の定あっさり勝った千石さんが得意気にこちらに来る。

「どお?神尾くん見ててくれた?」
「見てましたけど…」
「ね、俺とダブルス組もうよ」

言われた言葉に一瞬目を丸くする。

「千石さんシングルス専門じゃ…」
「あーうん。でも、別にダブルスやらないって訳でもないよ?ね、いいでしょ?」

懇願するように両手を合わせる。
断る理由もないし俺は渋々了承する。
というか、何故かあの顔をされると断れない。

ゲームが始まって千石さんとの初めてのダブルスは、なんと言うか痒いところに手が届くと言うか…
リズムがいい。

「俺達相性いいかもね♪ラッキー♪」

そんな軽く言ってのけるけど、もっと強い相手だったら確実に俺が足を引っ張るの、分かってる癖に。
それにしても、歓声が耳障りになる事があるとはな。

「ねぇ神尾くん、俺お腹空いちゃった」

唐突に言い出す千石さんに今来たばかりなのにと思いながら振り向くと、いつもとちょっと違う困ったような顔。
相変わらずギャラリーは千石さんを見つめる視線で溢れている。

「分かりましたよ、どっか行きましょう」

俺の言葉に子供みたいに目を輝かせる。
この人はもう…本当に…

二人分の鞄を自転車に乗せ、千石さんを促す。

「絶対俺のが軽いから」
「えぇ~俺が漕ぐの?まあいいけど」

二人乗りで走り出すと落胆の声が聞こえてくる。

「いやぁ、なんかゴメンね~あんなに女の子集まると思わなくてさ」
「別に、分かってますよ」
「俺、来ない方がいいのかな」

不意に言われた言葉に、千石さんの肩を掴んでた手にぎゅっと力が入った。

「千石さんあのさ…俺、千石さん来てると嬉しいよ。でも、周りが千石さんに対してキャーキャー言ってるの見るのは、好きじゃない」
「うん…ゴメンね」

謝る千石さんの耳に、俺はそっと囁いた。

「だからね、俺…俺も好きだから…その…」
「…!?」

一瞬自転車が止まり振り返る千石さん。

「アハッ!千石さん、その顔!」
「~~~だって、だってさ神尾くん!」

泣きそうな顔を気を取り直すように左右に振って再び漕ぎ出す千石さん。
なんだ、案外簡単だったんだな。

「これで千石さんは俺のだからな♪浮気したらタダじゃおかないぜ」
「え~ヒドいよ神尾くん!俺そんな事する訳ないじゃない」
「どうだろうな」

ふざけ合って走り抜ける商店街。
この人とのリズムは、優しくて心地が良い。
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