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千石さんと神尾くんのお話②

・千神
・腐向け





「千石さんはっ!どうしてそう…っ!」

ふとした事で神尾くんを怒らせた。
原因は多分俺…
でも心当たりがありすぎて…

俺が好きになったから告白して、まさか応えて貰えるとは思ってなかったから浮かれてた。
日課だったナンパもしないで行ける時はできるだけ神尾くんに会いに行った。
会えない日はメールして…いいよって言ってくれる時には電話した。
でも、考えてみれば神尾くんの性格からして、それは断れなかっただけって話で。
俺はそこに漬け込んだだけなのかなって。

怒って去る神尾くんを追うことが怖くて出来なかった。
追ったらなんかもう二度と会っちゃいけない気がして。

「何やってんだろ俺…」

溜め息を吐いてとぼとぼ歩く俺の姿は、酷く惨めでカッコ悪いだろうな。

何でも受け入れてくれそうだから、何も言えない。
そんなことがあるなんて。
俺にしては遠慮してたつもりでも、神尾くんは凄く頑張って応えてくれてたんだと思うと申し訳なさでいっぱいになる。

女の子とデートはいっぱいしたけど、一対一になったことはなかった。
適当に遊んで、告白されるような状況は全部避けて、それで充分だと思ってた。
俺って淡白なのかなって思ったけど、別にそれで構わなかったし、人を好きになるなんて、心が弱いんだ、なんて思ったりもして。

だから初めてだったんだ。
自分が滑稽に思える程誰かに執着するのは。
キミが初めてだったんだ。

だから好きって言ってくれた時、嬉しくて、でも信じられなくて。
だって俺達、男同士だよ?
俺だけがおかしいのかなって、俺だけがおかしくて良かったのに。
キミが優しいから…

気がつけば携帯を取り出してぼんやりと画面を眺めてた。
新着メールは、ない。

再び溜め息を吐いて歩き出す。

帰る気にもならないから街で女の子にでも声掛けてみようか。
そんな事を考えたけど、そんな気には全然なれなくて。

何がしたいんだろ、俺。

フラフラするのが当たり前過ぎて、大事なモノをつなぎ止める術が分からない。

「嫌われちゃった…かな」

独りごちて空を仰いだ。
せめてありがとうって伝えたいな。
俺はね神尾くん、ホントに、本当にキミが好きなんだよ?
そんな事、キミにはいい迷惑かもしれないけど。

下を向いたら泣きそうになるから、なるべく上を向いて歩こう。
そう思った時だった。

「千石さん!」

呼び止められてハッとして、でも怖くて振り向けなくて、俺はなんて臆病なんだろ。

「千石さん、何で追いかけて来ないんだよ。俺のこと、好きなんじゃないのかよ」

往来で、何てこと言うんだキミは。
幸い人通りはないからいいものの。
好きに決まってるじゃない。

「俺が何で怒ってるか、千石さん分かってる?」

拳を握り締める俺に追い討ちの言葉。
苛立った神尾くんの声に、謝りたいのに声が出ない。
後ろで溜め息が聞こえた。

「あのさ千石さん、そのままでいいから聞いてよ。俺はさ、千石さんが俺に遠慮してんのがイヤなの。俺だって千石さんのこと好きなのに、何か信じてもらえてないのかなって。いつも俺に気を遣って、そりゃ俺は気の利いた事とか出来ないけど、もっと千石さんがしたい事、言って欲しい。俺、言って貰わないと分からないから…」

神尾くんの言葉に俺の涙腺は決壊寸前で。

「なあ千石さん?俺の話聞いてる?」
「…聞いてるよ」

ようやく答えた俺に、ホッとして近付く気配。

「千石さん泣いてるの?」
「…覗かないでよ~」

顔を背ける俺を見て、神尾くんが笑った。

「千石さんって、案外泣き虫だよな!」

誰のせいだと思ってんの?
神尾くんはよしよしと幼い子をあやすように軽く俺の頭を撫でた。
俺のが年上なのに…。

さっきまでのどんよりした気持ちはどこへやら、俺の気持ちは霞が晴れたように爽やかで。

「だからね、千石さん、遠慮しないで何でも言ってよ。俺もっと千石さんの事知りたいよ?」

優しい声で言う神尾くんに、俺は勇気を出して言ってみる。

「じゃあ、今度の日曜日、デートしてくれる?」
「いいよ」
「一緒に観覧車乗りたい」
「お安い御用」
「…神尾くんキスしていい?」

最後のお願いはちょっと躊躇った後、神尾くんは辺りを伺って素早く俺に口づけた。
唇が触れるか触れないかの、軽いキス。

「こ、これでいい?」

その場で抱きしめたくなる衝動を抑えて、俺は笑って頷いた。

「俺、一生分のラッキー使ったかも」
「大袈裟だな千石さんは!」

笑った神尾くんは眩しくて。
だからキミが好きなんだ。

「ありがと」
「ん?」

呟くように言った俺に神尾くんはどういたしましてと言ってまた笑った。

俺はとっても幸せ者です。
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