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この手を離さない

・豊幻
・神帝フッド、神帝ピーター
・腐向け






何気なく触れられた肩に残る温もりに、何故だか胸が掻き乱される。
触れた手を掴んで離したくない。
そんな感情が湧く自分が酷く浅ましい存在に思え、嫌だった。
それでも旅を共にすればする程、感情は大きくなっていく。

―決して手に入らないのに。

分かっていても、自分に向けられる笑顔や優しさを見ると、どうしようもない気持ちになってしまう。
自分だけが、そんな思いに悩まされているのかと思うと、悔しさと共にそんな事を考えている場合ではないのにと、罪悪感が生まれ自己嫌悪に陥った。

「浮かない顔をして、どうした?」

小さく溜息を吐いたピーターに、いつも通りの声色でフッドが尋ねてくる。

―どうしてキミは、いつも僕の隣にいるんだ。

そう悪態を付きたくなるのを飲み込んで、ピーターはかぶりを振って笑顔を見せた。

「皆とはぐれたので不安だろうが、大丈夫。すぐに合流できるさ」

励ますような言葉に、そうじゃないんだと心の中で否定しながらピーターは頷いた。

「ここは未知なる土地だ。何が起こるか分からないから、油断しないように進もう」

当たり前の台詞が物足りなくて、ピーターは頷きながら俯いた。

―嫌だ。

自分の感情に振り回されたくなくて、何度も気持ちを切り替えようとしているが、よりにもよって二人きりという状況に、感情はぐるぐると渦を巻いて今にも飲み込まれてしまいそうだった。
気付けば歩みは遅くなり、顔を上げれば先を行くフッドが振り向いてこちらに戻ってくる。

「どうした?やはりどこか具合でも悪いんじゃないのか?」
「ごめん。なんでもないんだ」

申し訳ない気持ちで、思わす声が小さくなった。
フッドは肩をすくめると、何を思ったかピーターの手を取った。
ハッとして彼を見れば、引っ張るように歩き始める。

「しっかりしろよ。何だか落ち込んでるようだが、具合が悪くないのであれば、私がちゃんと連れて行ってやるから」

こちらを見ずに言うフッドの手が温かくて、ピーターはその手をぎゅっと握り返した。
それを見てフッドは振り向くと、笑顔を見せる。
何故だか泣きたい気持ちになって、ピーターは目を瞑って手を引かれるまま歩いた。

「言いたくなければ言わなくていいが、君がそんなんだと何だかこちらも調子が狂うなぁ」

わざと明るい声で言われ、それがまた胸を締め付けた。

「…フッド、好きだよ」

抑えきれずに、吐き出すように聞こえない程度に小さく言ったつもりだった。

「……私も好きだよ」

少し間を置いて返ってきた言葉に、ピーターは目を開けてフッドを見た。
フッドはこちらを見ていなかったが、握られた手に更に力が込められたのを感じて、ピーターは再び目を閉じる。

「何を悩んでいるのかと思ったら、そんな事だったのか?」

不意に歩みを止め、振り返ってフッドがこちらを見るのを感じた。

「…ごめん」
「何故謝る」

顔を見れば呆れたような表情をしていて、ピーターはもう一度「ごめん」と呟く。

「僕の好きと、キミの好きは、多分違う。でも、ありがとう」

ぎこちなく微笑むピーターを見て、フッドはふんっと溜息を吐いた。

「君の好きと、私の好きが違うのなら、君の私への思いは一体なんだろうな」
「…分からないよ。でも、迷惑は掛けたくないんだ」
「迷惑が掛かる好きってなんだ?」

少し怒ったように聞かれて、ピーターは困ったように苦笑する。

「分かってる癖に、意地悪だなぁ」
「分からないな。好かれて迷惑な事なんてあるものか」
「…やめてくれよ」
「君が言ったんだろう。それに、悩んで落ち込まれるぐらいなら、ちゃんと解決させた方が君もラクだぞ」

引かないフッドの言葉に、ピーターは若干の苛立ちを覚えて手を振りほどこうとするが、捕まれた手は離れない。

「悪かった。聞こえるとは思わなかったんだ。もういいだろ、離してくれないか」
「嫌だ。離したら、君はもう私の隣には来ないだろう。それは絶対に嫌だ」
「フッド!」

悲鳴に近い声を上げてフッドを見れば、決してからかっている訳ではない真剣な眼差しに、ピーターはたじろんだ。

「頼むから…これ以上僕に惨めな思いをさせないでくれよ…」

消え入るような声で呟き視線を逸らすと、ふと頬に手が触れられた。

「私は君に、私の隣にいて欲しいんだ。これからも、ずっと」
「…僕は、キミのこの手が欲しいんだ。手に入れたいって思ってるんだよ。でも、それは出来ないだろう?いずれは離れるのなら…」
「離さないさ」

確信したような力強い言葉に、ピーターは怪訝な顔でフッドを見た。
フッドは頷くと笑ってピーターの頭を撫でる。

「離さないよ。言った通り、私が君に傍にいて欲しいからな」
「…嘘だ」
「君にとって、私は信用できないか?」
「そんな訳…」

泣きそうなピーターに微笑み掛けると、冗談めかして軽く頭を小突いてフッドは再び手を引いて歩き出す。

「どんな時でも一緒にいよう。君は私の大事な…誰よりも特別な仲間なんだ。好きだよ。多分、君と同じ気持ちだ」
「…ありがとう」

永久に離さないといったように力を込められる手を、強く握り返すと、ピーターはフッと笑う。
伝わる温もりは、決して冷めない気がした。

―ありがとう。僕だって、離すもんか。大好きだよ。

心の中でもう一度言うと、ピーターは前を向いてフッドの隣に並んだ。

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