BANBAN★BINO

©2003 BANBAN★BINO
TOPBMSS(パンゲ/豊幻・他) ≫ 恋と言うより

恋と言うより

・化魔王フック、土のサンドラ



夢心地のようなフワフワした中に、サンドラはいた。
温かく包み込むような感覚に、うっとりと酔いしれる。
素肌にを滑る指先が冷たくて目を開け、触れた箇所に視線を落とせばあられもない自分の格好が目に入り、驚いて顔を上げた。
一気に夢から醒めた様子に、目の前の化魔王は意地悪そうな笑みを浮かべて小首を傾げた。

「何だョ。怯えた顔しやがって。酔いが醒めちまったか?」
「わ、私……っ」

慌てて離れようとするが、腰に腕を回されバランスを崩してそのまま化魔王の膝の上にすとんと座ってしまう。

「離して!」

悲鳴のような声を上げると、化魔王はムッとして顔を寄せた。
言動や素行はお世辞にも上品とは言えないが、近くで見るとその端正な顔立ちに、サンドラは思わずドキドキするのを感じて視線を逸らした。

「怖くなったのか? やめる?」
「やめるって何が……」

そこまで言って、露わになった自分の胸を見てサンドラはハッとして慌てて両手で隠す。

「おいおい、まさか何も覚えてないのかぁ?」

呆れたような化魔王の声に、サンドラは泣きそうになりながら頷いた。

「……マジかョ……」

拍子抜けした様子で呟くと、化魔王は深い溜息を吐く。

「お前がくだらん作戦立てようって、付き合ってやったのは覚えてるか?」

問われてサンドラは小さく頷いた。
それは覚えている。
バンパイアフッドとバンプピーターの間にある、並々ならぬ絆を感じてサンドラは焦った。
自分を守る筈のフッドが、自分よりも父を殺したかもしれない相手に心を開いているのを見ていられなかった。
昔から顔なじみである事はフッドからも聞いていたし、そこに自分が割り込めない事も分かっていた。
それでも少しでも振り向いてくれないかと、自分と同じような立場にいるのではないかと思う化魔王に、二人の邪魔をしようと話を持ち掛けたのだが―。
話を聞いている内に、余計にどうにもならない思いにさせられ、化魔王もまたピーターをどうにかしたい訳ではない事が分かって、自分一人が空回りしている事が悲しくなった。
自分はやはり一人なのだと泣きそうな気持ちになっていたら、面倒臭そうにしながらも不器用に化魔王が慰めてくれていた気がする。

「だからやめろって言ったんだ。止めたのにガバガバ飲みやがって」
「私お酒飲んだの?」
「気が紛れるかと思ったから、ちょっと勧めたらお前とんでもねぇ飲み方するんだもんな」
「……ごめんなさい」

素直に謝るサンドラを見て化魔王はポリポリと頭を掻くと、サンドラの衣服を整えて身体を離した。
ベッドから降りるとサイドテーブルに置かれたグラスを手に取り、中身を飲み干す。

「それにしても『フックって、よく見たらフッドよりかっこいいのね』とか言って、見物だったぜ」

ゲラゲラ笑う化魔王に、サンドラは顔が熱くなるのを感じて身を乗り出した。

「嘘! 私そんな事言ったの!?」
「言った言った。アツーイ口付けまで交わしたんだぜ?」
「ウソ……」

化魔王は面白そうに笑っていたが、今にも泣きそうなサンドラの顔を見て視線を落とした。

「……よせョ。俺がいじめたみたいだろ」
「私……そんなはしたない事……」
「酔ってたんだから気にするなって。そんな大した事じゃ……」
「初めてだったのに……」

ポツリと呟くサンドラの言葉に、化魔王は小さく舌打ちして困ったようにもう一度頭を掻く。
これだから子供なんだ。
後でからかってやろうと自分も調子に乗ったが、本気で落ち込むサンドラを見ていたら、よく分からないがチクチクと苛立った。

「そんなにフッドがいいのかね」

思わず口にした自分に腹が立ち、今度は大きく舌打ちしてズカズカと歩くとベッドにヘたり込んでいるサンドラの隣に腰掛ける。

「……初めて見た時に、いいなって思ったの。パパとお兄ちゃんには適わなかったけど、強くて勇敢で格好良かった」
「一目惚れってヤツか」
「クライシス化して、家族が増えたって嬉しかった」
「家族ねぇ……」

サンドラの感覚は家族のいない自分にはよく分からないが、その言葉尻に化魔王はおやと思う。
無意識かもしれないが、サンドラの言葉は全て過去形だ。
化魔王は後ろ手を付き天井を仰ぐと、ふぅっと溜息を吐く。

「家族だなんだより、因縁のが強いんだろアイツらは」
「フックもそうなの?」
「俺は……また違うのョ」

自分とピーターの間にある奇妙な縁を思い、化魔王は自嘲気味に笑うとサンドラに視線を送る。

「ま、寂しくなったら俺がまた相手してやってもいいぜ。フッドよりイイ男なんだろ?」
「私そんな事言ってないもん」
「言ったんだョ。酔った時の言葉は本音だって言うぜ?」
「もう……」

頬を膨らませたサンドラだったが、気を持ち直したのか可笑しそうに笑顔を見せた。
立ち直りの早い所は、見ていて気持ちが良い。

「フックって面白い」
「面白いだぁ? カッコイイって言えョ」
「アハハ!」

無邪気に笑うサンドラを見ていたら、化魔王も可笑しくなって一緒に笑った。

「ピーター様にも言われたし、お前の面倒は俺が見てやるョ。だから大船に乗った気持ちでいろって。お前、そうやって笑ってる方が絶対いいぜ」
「うんありがと! フックってお兄ちゃんみたいね!」
「お兄ちゃん……」

悪意のないサンドラの言葉に多少残念な気持ちになりながら、それならそれでまあいいかと化魔王は笑って小さな姫を見つめた。
スポンサーサイト

Comment













非公開コメントにする