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月と花

・界霊
・聖界一本釣、聖霊牛若
・腐向け







綺麗な満月を見上げて聖霊牛若はほぅ、と溜息を吐いた。
こんなに見事な月の夜は、気の合う友人と美味しいお酒でも飲みたい気分である。
今にも落ちて来そうな月に誘われて、聖フラダイスの見張り塔の天辺に来たはいいが、手ぶらで失敗したなと牛若は思った。
ならば笛でも、と思った矢先に背後から声を掛けられ牛若は振り向いた。

「何だ先客がいたのか」
「聖界一本釣!こんな時間にどうしたんですか?」

驚いて尋ねると、聖界一本釣は肩をすくめた。

「月が綺麗だったから月見酒でもしようと思ってさ。お前こそどうしたんだよ」
「同じです。ただ、手ぶらで来てしまったので一曲吹こうかと思いまして」

手にした笛を見せて牛若は苦笑する。

「じゃあ丁度いいや。付き合ってよ」

酒瓶を見せて笑う一本釣の誘いを断る理由もなく、牛若は頷いた。

「おや、杯が二つ…」
「ああ、誰かいるかなって思ってさ、そのまま持って来ちゃったんだけど…丁度良かったな」

ハハッと笑う一本釣に、牛若は酒を注いだ。
自分の分も注ぐと、二人は乾杯する。

「んー美人に注いで貰う酒は最高だね!」
「もう酔ってるんですか?」
「本当の事さ」
「…ありがとうございます」

エラく機嫌のいい一本釣に怪訝な表情を向けながらも、牛若は笑顔で礼を言った。

「聖霊源ではね、春になると皆桜の花の下で酒盛りをするんですよ」
「風情があるなぁ。お前の所の風潮とは合いそうな気がするよ。家来はもうごめんだけどね」
「その…本当にすみませんでした」

笑う一本釣に牛若は頭を下げた。

「いちいち謝らなくていいよ。嫌な思いした訳じゃないし。それに俺と牛若とじゃ、間違われても仕方ないよ。」
「そんな事は…」
「ほらほら、気にしない気にしない!」

言いながら酒を注いでくる一本釣を見て、牛若は若干自嘲気味に笑った。

「貴方は本当に気持ちの良い方ですね」
「そう?」

一本釣の盃が空なのを見て、注ぎながら牛若は頷いた。

「いつも堂々としてますし、いちいち悩んだりしなさそうだ」
「それじゃ俺が馬鹿みたいじゃないか」
「そうではなくて、潔くて度胸があるという意味ですよ」

笑う牛若に、一本釣は照れたような表情をして杯を一気に空けた。

「ヤマト爆神も聖遊男ジャックも、変わらないと思うけどな」
「そうですね」

ころころと笑いながら牛若は再び酒を注ぐ。

「それに牛若だって結構熱いだろ?あんまり変わらないんじゃないかなぁ」
「いえ、私が言いたいのは、貴方のその気質が私に合うって事です」

今度はちびりと飲みながら、一本釣は牛若の言葉の意味を考える。

「よく分からないなぁ」
「要は貴方が好きだって事です」

唐突に言われ、一本釣はむせた。

「ゲホッゲホッ…な、何だって!?」
「そんなに驚くような事は言ってませんよ?私にとって貴方は好ましいと言っただけです」
「あ…そう」

顔を真っ赤にする一本釣を見て、牛若はクスクスと笑った。

「すみません。からかうつもりじゃなかったんです。実際私は本当にそう思っているので…」
「本当はさ…」

牛若の言葉を遮るように視線を逸らして、一本釣は呟いた。

「杯たまたま二つ持って来たんじゃないんだ。お前を誘おうと思ってさ、部屋行ったらいないから…」
「探してくれたんですか?」

驚く牛若の問いに一本釣はハハハと笑った。

「多分ここだろうと思ったら、案の定だったからさ」
「どうして私を?」
「お前と同じだから、だよ」

言って一本釣りは空になった盃を突き出した。

「牛若と飲みたかったんだ。今夜は月が綺麗だから…好きだろうって思って…だから…」

柄にもない事を言ったと言わんばかりに、消え入るように言葉を濁らせ、一本釣は口を尖らせた。
牛若は嬉しくなって、もう少しだけ一本釣の傍に寄った。

「ありがとうございます」
「礼を言われる事かなぁ」

ポリポリと頭を掻いて、一本釣はようやく牛若を見て笑った。

「なあ、一曲頼むよ」
「いいですよ。どんな曲がいいですか?」
「お前が奏でるものだったら、何だって綺麗だよ」

屈託なく笑う一本釣に微笑むと、牛若は笛を取り出した。
月明かりの聖フラダイスに美しい笛の音が響いた。

―今日は最高の月見酒だな。花も隣にあるしな。

一本釣はそう思うと、耳を澄まして牛若の音色を堪能した。
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