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エンゼルランプ

・夢←幻
・アリババ神帝、神帝ピーター
・腐向け







―この気持ちはなんだろう。

次界ロードの旅の途中、ヘッドロココやヤマト神帝達とはぐれてしまった牛若神帝達は茹だるような砂漠の中しばし休憩を取っていた。

神帝ピーターは一人離れて見渡す限りの砂原をぼんやりと眺めながら、自身の中にある漠然とした気持ちを考えていた。

「皆大丈夫か?俺はオアシスの里に住んでたから平気だけど、無理しちゃいけないぜ?」

アリババ神帝が皆を労っている声が聞こえてくる。

―綺麗な声だな。

神帝ピーターはなんとはなしにそう思う。
天聖門を目指して皆と別れた時、自分のチームのリーダーは魯迅フッドが適任だと思っていた。
冷静沈着で頭も切れる。
だが実際は騎神アリババが先頭に立っていた。

どちらかと言えば素直じゃないし感情的で、子供っぽい奴だというのが最初の印象だった。
しかし天性の勘というのか、頭脳派の自分達では無謀と思える事を平気でやってのけ、いつしか彼がリーダーとなっている事に安心感を覚えた。

一度、フッドにそれでいいのかと尋ねた事がある。
その時フッドは、自分は参謀役が適任だと言って笑った。

「それに、君だって既にアリババをリーダーとして認めている」

ニヤリと笑ってそう言われた時、自分が知らぬ間にアリババに絶大な信頼を置いている事に初めて気付いた。

―それだけだと思っていたのだが。

個性豊かな仲間の中で、自分は淡白な方だとピーターは思っていた。
一歩引いて皆について行き、サポート役としての立ち位置が向いているのだと。

だが、実際はどうだ。
アリババ神帝が命を落とし、ゴーストアリババとなって対峙した時、全くと言っていい程戦えなかった。
それは皆も同じだったが、自分は状況を判断して戦える、そう思った。

仲間だから。

そういう理由だと思っていた。
しかし、アリババが命を落としたきっかけや、復活した時に向けた特別な笑顔がヤマト神帝だった時、ピーターの心に嫌な風が吹いた。

「…美しくない」

その感情を思い出し、ピーターは自身の気持ちに対して呟いた。

ヤマト神帝は特別だ。
初めから聖フェニックス様と旅をしていた事もあるし、ヤマト神帝の勇気や言葉にどれだけ励まされてきた事か。
だからこそ、自分には到底なれないその存在に、ピーターは一抹の寂しさを感じた。
かと言って神帝男ジャックのようにヤマト神帝に噛み付くような感情も持ち合わせていない。

―中途半端だな、僕は。

「神帝ピーター、大丈夫か?水、ちゃんと飲んでるか?」

突如声を掛けられ、ピーターは驚いて振り向いた。

「ほら、俺のをやるよ。お前、一番暑いの苦手だろ?」

いつの間にいたのか、アリババ神帝が水筒を差し出していた。

「ああ、ありがとう」

動揺を隠しながら受け取ると、それを見たアリババはよいしょっと隣に座った。

「おいしいな」
「だろ~?牛若神帝が一緒で良かったよ。水に困らない」

アリババは無邪気に笑いながら返された水筒を受け取り、そのまま一口飲んだ。

「あっ…」
「どうした?」
「いや…なんでもない…」

邪推な事を考えてしまう自分を恥じながら、神帝ピーターはアリババのオアシスのように澄んだ青い瞳を見つめた。

―綺麗だ…

「俺の顔に、何かついてるか?」

訝しげに問うアリババに、ピーターはかぶりを振って謝った。

「おかしな奴だなぁ。何も謝らなくてもいいのに」

アハハと笑ってアリババは後ろに手をついて天を仰いだ。

「なあ、今度聖氷剣で氷作ってくれよ。さすがに暑すぎる」
「そうだな」

その手があったか、とぼんやり思っていると、今度はアリババがこちらを見ていた。

「な、何?」
「ピーター、俺達付き合い長いよな?ヤマト神帝より、一緒にいる時間長かった」
「そう、そうだなぁ…」

改めて言われて、ピーターは感慨深い物を感じる。
確かに過ごした時間は長いが、自分とヤマトじゃそれでも埋められない物を感じてしまう。

「突然どうしたんだよ」

自分の気持ちを胸に閉まって、ピーターはアリババを見る。

「お前さ、何か悩んでるなら俺に話せよ。フッドに言い辛いなら俺がいるだろ?」

ドキッとした。
同時にアリババに気付かれるぐらい顔に出ていたのかと思ったら、不覚をとったと心の中で思わず舌打ちをしてしまった。

「悩みか…ありすぎて言えないよ。このままちゃんと次界へ辿りつけるのかなとか、皆と合流できるのかなとか、キリがない」

冷静を装って肩をすくめて皮肉っぽく言ってみる。

アリババはじーっとピーターを見つめた後、軽く溜息をついた。

「ピーターさ、俺が戻って来た時、誰よりも喜んでくれてただろ?いつも冷めてるから、俺嬉しかったんだ」

突然言われた言葉に、ピーターは思わず顔が赤くなった。

まさか見られていたとは。
いや、見られていたのはいいとして、そこに気付かれているとは。
隠そうとしていたのに、これでは自分が存外たいした物じゃないという事をまざまざと教えられた気がして、ピーターは頭を抱えたいのを抑えた。

「だからさ俺、お前はもっと俺の事信頼してくれてるのかなって思ったんだけどな」

追い討ちをかけるような言葉に、頼り切っている事まで筒抜けじゃないかと恥じ入る気持ちに、ピーターは穴があったら入りたいと思った。

「いや、本当に何でもないんだ。それと、キミの言うとおり、僕はキミを信頼してるよ…多分誰よりも」
「だったら何でもないなんて言うなよ~!俺の目は誤魔化せないぞ!」

これではまるで拷問だ。
ピーターは心底困った。
言わなければ梃子でも動かないといった風なアリババに、逃げ出したくなると同時に、ちゃんと自分を見てくれていた事が嬉しかった。

「じゃあ言うよ。アリババ、もう二度と無茶な事はしないでくれ。もうあんな思いは二度としたくない」

ピーターの言葉に、今度はアリババが困ったような顔をする。

「イヤミなヤツだなぁ~!分かってるよ!もう二度としないよ…反省してる。悪かったよ。でも、そんな事言いたいんじゃないんだろ?」

渋々謝るアリババの顔を見てたら満足して、ピーターは立ち上がった。

「その件だが、たった今解決した。ありがとうアリババ」
「なんだよそれ!?」
「キミはそのままのキミでいてくれればいいよ。今度無茶しようとしたら僕が殴ってでも止めてやるから」
「おい、神帝ピーター!」

神帝フッド達の元へ走って行くピーターに、伸ばした手が宙を掴む。

「ちぇっ!ヘンなヤツ!」

アリババも立ち上がって後を追う。
それを感じてピーターは笑った。

言うもんか。
キミの事が好きだなんて、今のキミには言ってやらない。

今はアリババが自分を見てくれていた、それだけでいい。
いつか、もっとキミを守れるようになったら、その時は―

「さあ、休んでないでそろそろヘッドロココ様達の元へ行こう!」

元気なピーターの声に牛若神帝と神帝フッドは顔を見合わせながらも頷き立ち上がる。

いつまで続くか分からない旅だが、皆がいれば大丈夫だ。
きっと―ずっと皆一緒に。
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