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悠久の風に

・夢幻
・アリババ神帝、神帝ピーター
・腐向け







綺麗な星空の夜だった。
神帝ピーターは何となく寝付けずに目を覚ますと、休んでいる他の仲間を見た。
ヤマト神帝達とはぐれてしまった為メンバーは少ない。

神帝フッド、牛若神帝、神光子…

そこまで見て、神帝ピーターはおや、と思った。
アリババ神帝がいない。
目も覚めてしまった事だし、悪魔が出ないとも限らない。

―やれやれ、探しに行くか。

ピーターは腰を上げると、一面砂漠の中のちょっとした岩場から抜け出しキョロキョロと辺りを見回す。

「おかしいなぁ…そうそう見失うような所はない筈なんだけど…どこ行っちゃったんだろ 」

独り言ちて、そういえば来る途中にオアシスがあった事を思い出す。
もしやと思ってピーターはそちらに向かってみた。
そう遠くない場所に、一箇所だけ草木に覆われたオアシスに足を踏み入れる。
星空と月が反射して、水面がぼぅっと青白く光っているように見え、ピーターは感嘆の溜息を吐いて見入った。
そのちょっと先に、アリババ神帝が横たわっている姿が見える。
ピーターはハッとして走り寄った。
まさか悪魔に、と思ったが、近付いてみるとただ眠っているだけの様子に、知らずに胸を撫で下ろした。

「全く…すぐ一人で行動しちゃうんだからなぁ」

一人文句を言ってアリババ神帝に声を掛けようとして、その手を止めた。
マスクを外したその寝顔に、ピーターは思わず見惚れた。
普段は子供っぽいぐらいに生命力溢れているのに、眠っている姿はまるで今にもいなくなってしまいそうに儚く大人びて見え、不思議な美しさを見せていた。

「綺麗だ…」

思わず呟いて、ピーターはアリババの顔に掛かった前髪をそっと掻き上げた。
燃えるように紅い髪とは対象的な、澄んだ碧い瞳を思い出して、ピーターは手を離した。
ハラハラと落ちる髪を見ていたら、何故だかたまらなくなって視線を逸らした。

「僕…どうしちゃったんだろう」

胸が締め付けられるような感覚に、誤魔化すようにピーターは自分の胸元をぎゅっと掴んだ。

―もっと触れてみたい。

ふと湧き上がった感情に驚いて、かぶりを振った。

―相手はアリババじゃないか。

いつだって触れる事ができるし、他の誰よりも今までずっと一緒にいた。
今更何を、そう思いながら、しかし―とピーターは思う。
魔穴に吸い込まれた時、ゴーストアリババとして自分達と対峙した時、いつも傍にいた筈なのにアリババは手の届かない所へ行ってしまった。

―でも、こうしてちゃんと戻って来たじゃないか。

だが、これから先は?

何故だか不安を覚えたピーターは、光る水面を見つめた。
今触れたアリババは果たして本当にそこに存在しているのだろうか。

「…僕は一体何を…」
「う~ん…」

不意に声がして振り向くと、アリババが目を擦りながら起き上がった。

「アレ?俺寝ちゃったのかぁ…」

伸びをしながら欠伸をすると、こちらを見ているピーターと目が合ってアリババはぎょっとしたように驚いた。

「ピーター!どうしてここにいるんだ?」

いつも通りのアリババの様子に、ピーターは先程までの気持ちが消え去るのを感じたが、上手く言葉が出てこずに肩をすくめた。

「もしかして、探しに来てくれたのか?」

頷いて笑ってみせたが、ぎこちなくなってしまったような気がする。
マスクを付けていて良かった、と心の中で思ったが、アリババは怪訝な顔でこちらを見てピーターのマスクを遠慮なくずらして外させた。
触れた手が温かく本物である事に、ピーターは思わず目を伏せた。

「何だ?どうしたんだよ。何か元気ないなぁ。あ、もしかして怒ってる?」
「…怒ってるよ」
「心配掛けてすまない。ついオアシスの里の事思い出してさぁ、ちょっと散歩しに来ただけなんだよ」

心にもない事を言う自分に気付かず、アハハと笑うアリババに、ピーターは彼の手を取った。

「ど、どうした?」

さすがに驚いてアリババは掴まれた手とピーターの目を交互に見た。

―幻なんかじゃない。本物だ。いつも通りのアリババだ。

ホッとすると同時に、自分は何故あんな気持ちになったのだろうという疑問が沸き、ピーターはパッと手を離した。

「何だよ…もう勝手に行動しないよ…」

ピーターが怒っていると思っているアリババは、口を尖らせながら掴まれていた手をさすると、立ち上がって服に付いた砂を払った。

「そうだよ、ただでさえキミは危なっかしいんだから…」
「何だよヤマト神帝よりはマシだろ?」

軽口を叩くアリババに笑いながら、ピーターも立ち上がる。

「皆が目を覚ましたら、また余計な心配を掛けるから戻ろう」
「そうだな!フッドに怒られたくないしな!」

ピーターの言葉に頷くと、アリババはマスクを付け直して歩き出す。

―風みたいなヤツだな。

その後ろ姿を見て、ピーターは思った。
確かに触れるのに決して掴めない。
誰よりもつなぎ止めておく事のできないような物をアリババに感じて、少し寂しい気持ちになりながらもピーターはそれを美しいと感じた。

「手に入らないからいいのかもな」
「何してるんだ?早く来いよ!」

―人の気も知らないで。

決して掴めなくても感じていたい。
だからその風が止むまでは傍にいよう。
少し先で手招きするアリババに手を上げて応えると、ピーターは走り出した。
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